親の面倒をみた人が多く相続できるの?【寄与分】

こんにちは。司法書士・行政書士・ファイナンシャルプランナーの檜山大地です。 当事務所は、平成29年5月に長野市稲田で開業いたしました。 当事務所では、相続・遺言、成年後見、会社設立、不動産・商業登記、離婚、裁判事務、各種許認可申請など、司法書士業務を中心に幅広く業務を行っております。 相続・遺言や成年後見など「家族に関する法律手続」には特に力を入れており、民事信託の活用や空き家対策支援などにも積極的に取り組んでおります。 地域に密着した、親身で正確かつ迅速なサービスで「安心」と「信頼」をご提供するとともに、変わりゆく時代のニーズにも素早く対応し、お客様に満足していただけるよう、日々研鑽していく所存です。 皆様からのご相談・ご依頼を、事務所一同、心よりお待ちしております。 今後は、コラムにて、よくある質問や相談事例、法律手続きの解説や実務上の注意点など、皆様にとって耳寄りな情報を定期的に更新してまいります。

寄与分とは

第1回は「寄与分」についてお話ししたいと思います。 寄与分とは、被相続人(亡くなった方)の財産の維持または増加について特別の寄与(貢献)をした相続人がいる場合に、他の相続人との実質的な公平を図るため、その貢献度合いに応じて他の相続人より多くの相続財産を取得させる制度です。

親の面倒をみた人が多く相続できるの?

実はこの寄与分という制度、実務上はなかなか認められないのが現状です。 寄与分がよく問題となるのは、相続人のうちの一人だけが被相続人の面倒をみているようなケースです。例えば、長男は親の面倒をみていて、次男は全く面倒をみていなかったような場合です。一般的に考えれば、ずっと親の面倒をみていた長男が多めに相続できるような気がします。 しかし、親子の間には扶養義務というものがあります。親の面倒をみることは、子どもにとっては当然のことなのです。 そのため、仮に長男が親の面倒をみていたとしても、それが通常の扶養義務の範囲内であれば、親の財産維持増加に貢献したとは言えず、寄与分は認められません。寄与分はあくまで、「被相続人の財産の維持または増加について特別な寄与(貢献)」をしたものに限られるのです。 また、特別の寄与というためには、無償性が求められます。寄与に対する補償の意味合いで相応の生前贈与がなされているときは、特別の寄与とは認められません。更に、特別な寄与があったと評価されるには寄与行為と被相続人の財産の維持または増加との間に因果関係が必要になります。仮に通常期待される以上の貢献を行ったとしても、被相続人の財産の維持または増加との因果関係があったと認められない場合には、特別の寄与があったと言うことはできません。 なお、寄与分はあくまで相続分を修正する制度ですので、相続人以外には認められません。上記のケースで言えば、親の面倒をみていたのが長男のお嫁さんであった場合、どれだけ献身的にお世話をしていたとしても、長男のお嫁さんには寄与分は認められません。 そして、寄与分は共同相続人全員の協議で決めるのが原則です。もし協議で決まらない場合は、家庭裁判所が定めることになります。費用や手間がかかるうえ、必ず寄与分が認められるとは限りません。

争いを防ぐためにどうすれば良いのか

もしお子さんに面倒をみてもらっていたり家業を手伝ってもらったりしている方で、そのお子さんに少しでも多く相続させたいと考えている方は、寄与分の制度によってそのお子さんが多く相続するのを期待するのではなく、遺言書生前贈与を積極的に活用すべきです。 特に、遺言書を残しておくことは非常に有効です。遺言により、面倒をみてもらったお子さんの取り分を多くすることで、面倒をみたお子さんに感謝の気持ちを表すことができますし、取り分に差をつけた理由をちゃんと遺言書で説明してあげれば、他の相続人にも理解してもらえるでしょう。また、長男のお嫁さんなど、直接の相続人でない方に財産を残したい場合にも遺言書は必須です。

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