養育費請求権の消滅時効について
今回は、養育費請求権の時効消滅について、解説します。
以下の事例で検討しましょう。
【事例】私は10年前に元夫と離婚しました。しかし、離婚後、元夫から長男の養育費を払ってもらえなかったため、9年前に家庭裁判所へ養育費の調停申立てを行い、8年前に「夫が、私に対して、調停成立月から長男が22歳になるまで毎月養育費を5万円支払う」という内容の調停が成立しました。元夫は、調停成立から1年間は毎月の養育費をしっかりと払ってくれていたのですが、7年前から毎月の養育費を支払わなくなりました。元夫に対し、7年前からの養育費を請求したいのですが、もう時効なのでしょうか。 |
養育費請求権は、定期金債権とされており、原則として各発生月から5年で時効により消滅します(民法166①)。しかし、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は10年とするとされています(民169①)。したがって、家庭裁判所の調停や審判等により、過去の養育費未払分について確定的に取り決められた場合は、その取り決められた過去の未払分の養育費請求権は、調停等の成立から10年で時効消滅します。ただし、確定判決等による権利であっても、確定の時に弁済期の到来していない債権については適用がありません(民169②)。よって、調停成立時点で、未だ発生していない将来分の養育費については、調停調書に記載があったとしても、消滅時効期間は各発生月から5年ということになります。
本事例では、養育費の支払いについて調停で取り決めがされていますが、調停成立時点で未だ発生していなかった各月ごとの養育費請求権は発生から5年で時効により消滅することになります。そのため、今から5年以上前に発生した各月ごとの養育費請求権は時効によって消滅することになります。
「権利の上に眠る者は保護せず」という言葉があります。請求できる権利が与えられているのに、それをしないまま放置した者は保護しないという意味です。未払の養育費請求権がある方は、早めに対処しましょう。