亡くなる順番で相続人が違う?③【数次相続】
こんにちは。司法書士・行政書士・ファイナンシャルプランナーの檜山大地です。
第8回から、相続人となる人が亡くなっているケースについて解説をさせていただいております。
相続人が亡くなった場合、亡くなった人(被相続人)よりも先に相続人が亡くなっている場合と、後に亡くなっている場合に分けることができます。つまり、被相続人と相続人の死亡の順番によって、誰が相続人となるのかが変わってくるわけです。前回までは、被相続人より先に相続人が亡くなっている場合について説明しました。
今回は、被相続人の死亡後に相続人が亡くなったケースについて述べたいと思います。
数次相続とは
ある人が亡くなったことにより相続が開始したものの、遺産分割協議や相続登記を行わないでいるうちに、相続人が亡くなってしまうことがあります。このように、被相続人の相続手続をしないうちに、その相続人についてさらに相続が開始した状態を、次々に相続が発生したという意味で「数次相続」といいます。具体例で、見ていきましょう。下の事例をご覧ください。
ある家族は、父A・母B・長男C・長女Dの4人家族です。長男Cには、妻Eがおり、その間にできた子どもF・G(父A・母Bの孫)がいます。平成20年に父Aが亡くなりましたが、その遺産分割協議や相続登記をしないうちに、平成29年、長男Cが亡くなりました。
上記の事例で、相続人とその法定相続分はどうなるのでしょうか。数次相続が発生した場合、いったんは相続人は被相続人の相続人である地位を取得しますので、当該相続人の相続人が相続分を相続することになります。上記の事例では、父Aに相続が開始した平成20年当時、その法定相続人は母B、長男Cおよび長女Dでした(法定相続分は母Bが2分の1、長男Cと長女Dが各4分の1)。しかし、何ら相続手続をすることなく長男Cが平成29年に亡くなってしまいましたので、父Aの相続について長男Cが有していた相続分を、長男Cの法定相続人である長男の妻E、子F・Gが相続することになります。したがって、長男Cが有していた相続分4分の1をさらに法定相続分で分け合うことになりますから、長男の妻Eが8分の1(4分の1×2分の1)、子F・Gがそれぞれ16分の1ずつ(4分の1×4分の1)となります。
以上をまとめますと、父Aの相続人とその法定相続分は、母Bが2分の1、長女Dが4分の1、長男の妻Eが8分の1、子F・Gが各16分の1となります。前回お話しした代襲相続との決定的な違いは、妻(長男の嫁)も義父の相続人となることです。このように、亡くなった順番で相続人が異なりますので、注意が必要です。
相続登記を放置した場合のリスク
相続手続きを放置していると、数次相続が次々に起こり、ねずみ算のように相続人の数がどんどん増えていきます。亡くなった人が残した不動産の名義を特定の相続人名義にしたい場合であっても、遺産分割協議はすべての相続人で行わなくてはなりませんので、相続人の中に一人でも協力してくれない人がいたり、認知症の人や行方不明者がいれば、遺産分割協議が思うようにできなくなってしまうことがあります。特に、数次相続では上記事例の長男妻Eに相続権が発生するように、その家系において血のつながりの無い人やあまり交流が無い人が相続人となることもあるため、遺産の帰属先について揉めたり、トラブルになったりするケースが多いように見受けられます。また、相続人が増えたり、相続関係が複雑化したりするほど、必要な書類も増えるため、手続きに時間や費用がかかる可能性もあります。また、相続登記に必要な書類の中には、保存期間が定められているものがあるため、書類が期間経過で廃棄され取得できなくなる場合もあり、より手続きが煩雑になっていきます。相続手続きは、なるべく早めに済ませておきましょう。
3回に渡って、代襲相続と数次相続のお話をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。相続人が亡くなっているケースについては、相続手続が複雑になる場合が多く、一筋縄ではいかないこともあります。そのようなときは、是非、当事務所までご相談ください。