会社の役員変更登記をお忘れなく!②【選任懈怠と登記懈怠】

 司法書士・行政書士・ファイナンシャルプランナーの檜山大地です。

 今回も、前回に引き続き、株式会社の役員変更手続きを怠った場合の問題点について考えていきたいと思います。

 「役員変更手続きを放置した」と一口に言っても、その放置の仕方にもパターンがいくつかあり、実はこのパターンによって登記のやり方も変わってきます。

 以下を見ていきましょう。

選任懈怠

 役員変更登記を怠った場合、そのパターンは主に2種類あります。1つ目は、役員改選等の必要があったにも関わらず、株主総会等を開催せず(議事録もない)役員の選任自体自体を行っていない場合で、このような状態を「選任懈怠」といいます。

 この場合、任期が満了しているはずの役員は会社法上どのような地位にあるのかが問題となりますが、新たに役員が選任されるまで、なお役員としての権利義務を有することになります。そして、この権利義務役員は辞任より退任することもできません。

 選任懈怠となっている状態で新たな役員が選任された場合、登記簿の記載には注意が必要です。

 例えば、監査役の任期が4年で監査役A1名のみを置く監査役設置会社において、平成25年3月31日にAが任期満了となった場合で、Aが再選されず後任者の選任もされないようなときは、監査役Aの任期満了退任の登記や重任の登記をすることができません。しかし、平成30年3月1日に後任者Bが監査役として選任された場合、監査役の変更登記は、「監査役A 平成25年3月31日退任」「監査役B 平成30年3月1日就任」として登記を申請することになります。

 このように、監査役Aは後任の監査役Bが就任するまで権利義務監査役として通常の監査役と同じ権限を持っていたのにもかかわらず、登記簿上はまるで平成25年4月1日から平成30年2月28日までの間は監査役が存在していなかったかのような記載になってしまうのです。

登記懈怠

 2つ目は、ちゃんと株主総会等を開催し、役員改選を行っていた(議事録もある)が、役員変更登記の申請だけを怠っていた場合で、このような状態を「登記懈怠」といいます。この場合は、今まで作成してきた株主総会議事録等を添付して、申請すべきであった役員変更登記をすべて行うことになるでしょう。

 いずれにしても、会社を経営されている方は、役員の任期に注意し、改選時期が来たり役員に関して何か変更があった場合等は、役員変更登記を忘れずに行ってください!

 特に許認可が必要な業務をされている会社様は要注意です。なぜなら、会社の登記事項証明書を役所や監督官庁に提出することが多いため、役員変更登記をしっかりしていないと許認可申請手続きに支障をきたすおそれがあるからです。

 また、許認可申請が必要な業務をしている会社か否を問わず、登記記録上、登記手続きを遵守していなかったことが読み取れますから、第三者にコンプライアンス意識や管理体制が不十分であるといった印象を与えかねませんので、注意しましょう。

  次回は、役員変更登記手続きを怠った場合に、何かしらの制裁があるのか?について解説していきたいと思います。

 

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