相続財産の名義変更
遺言や遺産分割協議の内容に基づき、相続財産の名義変更を行います。
不動産の名義変更(相続登記)
はじめに
亡くなった方から不動産を相続する人への名義変更いわゆる相続登記は、その不動産の所在地を管轄する法務局に、申請書と必要書類を提出して行います。土地や建物などの不動産の登記簿には、土地や建物の所在、面積のほか、所有者の住所・氏名などの情報が記載されていますが、不動産の所有者が死亡し、役所に死亡届を出しても、不動産の名義は自動的には変更されず、相続人等が法務局に相続登記申請をすることによって初めて不動産の名義が変更されます。 相続登記は相続放棄や相続税申告とは違い、期限が無いため、後回しになりがちです。相続が発生したら、お早めに不動産の名義変更をされることをおすすめします。 なお、相続した不動産を相続人が売却したり、お金を借りるために不動産を担保に入れたりするような場合は、前提として必ず相続登記が必要です。
相続登記を放置した場合に生じるリスク
相続登記をせずそのまま放置してしまうと、以下のような問題が生じる可能性があります。
問題点1.相続人の数が多くなり、遺産分割協議をするのが困難になる場合がある
被相続人が亡くなってから何年も放置していると、相続人であった人も亡くなる場合があります。相続人であった人の権利は、その相続人に引き継がれるため、相続人の数がどんどん増えていきます。遺産分割協議はすべての相続人で行わなくてはなりませんので、相続人の中に一人でも協力してくれない人がいたり、認知症の人や行方不明者がいれば、遺産分割協議が思うようにできなくなってしまうこともあります。 以下、具体的によくある事例をご紹介しましょう。
【事例】Bさんは現在、何年も前に亡くなった祖父Aさん名義の土地建物を管理しています。Bさんは、固定資産税の納税や老朽化した建物の手入れ等、その管理が大変になってきたため、建物を取り壊して更地にして不動産業者に売却することにしました。Bさんは売却に先立ち、不動産業者から「土地建物がおじい様の名義なので、まずはあなたの名義にしてください」との指示を受けました。
そもそもの話ですが、不動産は亡くなった方名義のままでは売却が出来ません。一旦不動産を相続した人の名義にしないと手続きができないのです。 そこで、Bさんは司法書士に依頼し、自分の名義にするため相続人の調査をしてもらったところ、なんとAさんの現在の相続人は25名であることが判明しました(下図参照)。これはAさんが亡くなってから何年も放置していたことが原因だったようで、Aさんの相続人であった人も亡くなり、その権利がそのまた相続人に引き継がれていくため、相続人の数が増えてしまったようです。中には会ったこともない相続人もいるようでした。Bさんは相続人全員と連絡を取り、全員から同意を得て書類に実印をもらわないと自分の名義にすることができません。
問題点2.膨大な量の書類が必要となったり、取得できない書類が出てくる
相続人が増えたり、相続関係が複雑化したりするほど、必要な書類も増えるため、手続きに時間や費用がかかる可能性があります。また、相続登記に必要な書類の中には、保存期間が定められているものがあるため、書類が期間経過で廃棄され取得できなくなる場合もあり、より手続きが煩雑になっていきます。
問題点3.勝手に不動産を売られたり、差し押さえられてしまう可能性がある
法定相続分どおりに登記するのであれば、他の相続人の同意がなくても相続人のうちの一人から相続登記ができてしまうので、相続人のうちの誰かが法定相続分の登記をして、自己の持分を勝手に第三者に売却してしまう事態も起こり得ます。 また、相続人のうちの一人に借金や税金の滞納がある場合、債権者が相続人に代わって法定相続分の登記をし、その相続人の持分を差し押さえることも起こり得ます。上記2つのケースで、既に遺産分割協議で他の相続人が単独で相続することになっていた場合でも、そのことを買主や債権者に主張することが難しくなってしまいます。
【問題点3のイメージ】
相続登記の必要書類
相続登記は、ケースによって必要書類が異なり、大きく分けると以下の4パターンになります。下記書類のほか、権利証や納税通知書、上申書、不在住・不在籍証明書などが必要になる場合があります。また、司法書士に手続きを依頼する場合には、委任状も必要になります。
遺言書がない場合
- 遺産分割協議によって相続登記をする場合
- 法定相続分によって相続登記をする場合
遺言書がある場合
- 遺言により法定相続人に相続させる場合
- 遺言により法定相続人以外に承継させる場合(遺贈)
遺言書がない場合の必要書類
1.遺産分割協議によって相続登記をする場合
被相続人に関する書類 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
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被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | |
相続人に関する書類 | 遺産分割協議書 |
相続人全員の印鑑証明書 | |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | |
不動産を相続する相続人の住民票 | |
その他の書類 | 不動産の固定資産評価証明書(評価通知書) |
2.法定相続分によって相続登記をする場合
被相続人に関する書類 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 |
---|---|
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 | |
相続人に関する書類 | 相続人全員の現在の戸籍謄本 |
相続人全員の住民票 | |
その他の書類 | 不動産の固定資産評価証明書(評価通知書) |
遺言書がある場合の必要書類
3.遺言により法定相続人に相続させる場合
遺言者(被相続人)に関する書類 | 遺言書(公正証書遺言以外の遺言書は検認済みのものが必要) |
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遺言者の死亡時の戸籍謄本 | |
遺言者の住民票の除票または戸籍の附票 | |
相続人に関する書類 | 遺言により相続する人の現在の戸籍謄本 |
遺言により相続する人の住民票 | |
その他の書類 | 不動産の固定資産評価証明書(評価通知書) |
4.遺言により法定相続人以外の第三者に遺贈する場合
遺言により、相続人以外の第三者に不動産を承継させる場合、登記原因は「相続」ではなく「遺贈」になります。例えば、父親に子がおり、子が生存しているのに孫に承継させたいという場合には遺贈になります。遺贈により、財産を受け取る人を「受贈者」と言います。遺贈による場合、遺言の中で遺言執行者が定められているか否かで必要書類が異なります。
遺言執行者が定められている場合
遺言者(被相続人)に関する書類 | 遺言書(公正証書遺言以外の遺言書は検認済みのものが必要) |
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遺言者の死亡時の戸籍謄本 | |
遺言者の住民票の除票または戸籍の附票 | |
遺言者が不動産を取得した際の権利証または登記識別情報 | |
受遺者に関する書類 | 受遺者の住民票 |
その他の書類 | 遺言執行者の印鑑証明書(発行後3か月以内のものが必要) |
不動産の固定資産評価証明書(評価通知書) |
遺言執行者が定められていない場合
遺言者(被相続人)に関する書類 | 遺言書(公正証書遺言以外の遺言書は検認済みのものが必要) |
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遺言者の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 | |
遺言者の住民票の除票または戸籍の附票 | |
遺言者が不動産を取得した際の権利証または登記識別情報 | |
受遺者に関する書類 | 受遺者の住民票 |
その他の書類 | 相続人全員の印鑑証明書(発行後3か月以内のものが必要) |
遺言者の相続人全員の現在の戸籍謄本 | |
不動産の固定資産評価証明書(評価通知書) |
相続登記 ご依頼の流れ
(1)ご面談
まずは当事務所にどのように相続したいか、相続をするに当たっての疑問点などをご相談ください。その上で、今後の進め方やスケジュール、費用などについて詳しくご説明させていただきます。そして、お客様から当事務所に相続登記手続をご依頼いただければ、この後のお手続きに進みます。
※費用につきましては、登記にかかる税金や実費等が高額になる場合、前受金を頂戴する場合もございます。
(2)必要書類の収集
ご要望に応じて、当事務所で必要書類を収集することも可能です。ただし、お客様ご自身でご用意いただかなければならない書類もございますので、ご面談時にご案内させていただきます。
(3)相続人調査・遺産分割協議書への署名押印
収集した戸籍で相続人の確認を行います。相続人が確定したら、相続人の皆様全員でご相談いただき、誰がどの不動産を相続するのか決めます。その結果に基づいて当事務所が遺産分割協議書を作成いたしますので、内容をご確認いただいた上で、署名およびご実印での捺印を頂戴します。
(4)登記申請
当事務所で登記申請書を作成し、必要書類と一緒に法務局へ登記申請を行います。登記は、申請日からおよそ1週間程度で完了します。
(5)納品・書類のご返却・費用のお支払い
登記が完了すると、法務局より登記識別情報通知(従来の「登記済権利証」に代わるもの)及び登記完了証が交付され、また申請時に提出した戸籍謄本や遺産分割協議書等の原本が返却されます。 当事務所で登記内容の最終チェックおよび各書類の整理を行ったうえで、書類の納品・ご返却をし、費用をお支払いいただきます。
預貯金の払い戻し・名義変更
預貯金の相続手続き
被相続人の死亡が金融機関に知らされた時点で口座が凍結され、被相続人の預貯金は引き出しや入金ができなくなります。これによって、特定の相続人が引き出しをすることを防ぎ、金融機関が相続トラブルに巻き込まれないようにしています。もし、被相続人の口座から毎月の公共料金の自動引落がされていたり、賃貸物件の家賃収入など継続的な振込入金がある場合、口座の凍結によって利用できなくなりますので、金融機関に被相続人の死亡を知らせる前に引落口座等の変更手続きをするなど注意が必要です。
預貯金の相続手続きは、各金融機関により必要書類や手続きが異なりますので、確認や問い合わせが必要になります。預貯金の払い戻しを受けるために、金融機関が交付する「相続届」や「相続手続依頼書」に必要事項を記入し、通帳やキャッシュカード、相続関係が分かる戸籍謄本や遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書などとともに金融機関へ提出します。遺言書がある場合には、遺産分割協議書の代わりに提出することになります。
書類を提出すると、およそ1週間から10日程度(数週間かかる場合もあります。)で、「相続届」で指定した口座に払い戻し金が振り込まれます。被相続人の同一口座の預貯金を複数の相続人で相続する場合には、相続人代表者の口座に一括で振り込まれ、相続人代表者が遺産分割協議等に基づき配分するというケースも多くあります。
預貯金の相続手続き ご依頼の流れ
(1)ご面談
今後の進め方やスケジュール、必要書類、費用などについて詳しくご説明させていただきます。
(2)必要書類の収集、確認
金融機関に提出する書類を用意します。戸籍謄本等は当事務所でも取得が可能です。また、不動産の名義変更等で使用した戸籍謄本等がある場合には、預貯金の相続手続きにも使用可能な場合があります。
一般的な必要書類
- 亡くなった方の通帳、キャッシュカード等
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(遺言書がある場合、遺言書)
- 金融機関所定の相続届等の書類一式 など
- 委任状
(3)書類への署名・押印
遺産分割協議書や相続届などに、署名捺印いただきます。
(4)各金融機関での預貯金の相続手続き
各金融機関の支店窓口において手続きを行います。
(5)預貯金の払戻し
相続人の指定口座に払戻金が振り込まれます。振込手数料は相続人の方のご負担となります。なお、ゆうちょ銀行の場合、口座を解約したことによる払戻金は、ゆうちょ銀行の口座に対してのみ振替が可能です。他の金融機関への送金はしてもらえません。振替を行わない場合、払戻証書による換金の手続きを行います。
当事務所では、不動産や預貯金以外にも、自動車や株式等の相続手続きも行っておりますので、ぜひご相談ください。
法定相続情報証明制度
平成29年5月29日(月)から,全国の法務局において,相続による不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の払戻手続きなど、各種相続手続に利用することができる「法定相続情報証明制度」がスタートしました。
今まで相続の手続を行う際には,亡くなった方(被相続人)が生まれてから亡くなるまでの戸除籍謄本等の束を,法務局や金融機関をはじめとする各種窓口に何度も提出する必要がありました。 例えば、亡くなられた方の財産中に不動産や預金口座がいくつもあったりすると、戸除籍謄本の束を各種窓口に提出しなければならず、それぞれ戸籍を審査するために時間がかかり、また、場合によっては同じ戸籍書類を何通も取得しなければならず、金銭的な負担もかかっていました。
法定相続情報証明制度は,法務局に戸除籍謄本等と相続関係を一覧に表した図(法定相続情報一覧図)を提出すれば,登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれる制度です。 今まで提出していた戸籍書類に代わり、この法定相続情報一覧図の写しを法務局、銀行、保険会社等に提出すれば済むようになりました。相続手続に必要な範囲内であれば複数通発行が可能ですので、各種相続手続を同時に進められ、時間を短縮することができます。 本制度により、相続手続きを行う相続人やその手続きを受ける担当部署双方の負担が軽減されることになるでしょう。
手続きの流れとしては、
- 被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本等を収集
- 相続人または代理人が法定相続情報一覧図を作成
- 所定の申出書に必要事項を記入し、1と2の書類を添付して登記所に申出をする
- 登記官による法定相続情報一覧図の確認及び保管 (保管期間は申出日の翌日から5年で、申出人はこの間であれば再交付を受けられる)
- 認証文付き法定相続情報一覧図の写しの交付及び戸除籍謄本等の返却
- 法定相続情報一覧図の写しを使用して、各種窓口で相続手続き
となります。
相続・遺産分割メニュー
- 相続業務 当事務所の7つの強み
- 当事務所の相続トータルサポート
- 相続開始後のタイムスケジュール
- 遺言書の有無の確認
- 相続人の調査・確定
- 相続財産の調査
- 相続放棄などの検討(具体的に検討されている方は相続放棄をご覧ください)
- 遺産分割協議
- 相続財産の名義変更
- 相続税の申告